乙
壬生雅穂
海思う生きている木に稲掛けて
木の葉髪親子喧嘩は極まりぬ
犬好きが犬を値踏みの年の暮
師の賀状誤字美しく座りけり
片目ずつ見て右が明るし福寿草
障子閉め見知らぬ部屋となりにけり
並べればひとつ転がる寒卵
見開いている寒鯉の重たそう
冬うららわが名を「乙」と契約書
浮寝鳥やたらに離れゆく一羽
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