家
遠藤 治
簡単な賀状に至る長電話
弁天の穴の潤ふ暮春かな
シャンプーで裸のひとが髪洗ふ
遠巻きに闇を集める夏料理
蜜豆のやうにいろいろ住んでゐる
行く夏や海の家には海が棲む
蜩や脳にうちがはおもてがは
紅玉を包めるパイの湿りかな
秋や濃き鉛筆で描く方眼紙
屈伸の屈の血圧神の留守
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